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by jq1ocr

エッチング液の寿命を考える・2

お待たせしました(ん?誰も待ってないって?笑)第1話に続いて,エッチング液の寿命を考えるの第二話です.今回はちょっと計算チックになりました.おまけに結論は出ていないのですが,お時間のある方はおつきあいください.hi ちなみに前回はどんな話だったかというと,エッチング液の寿命を測るのに比重計が使えないか?という話でした.

まずエッチング液で起こっている化学反応を書いてみましょう.
2FeCl3 + Cu → 2FeCl2 + CuCl2
ここで使用しているエッチング液のラベルを見ると濃度は 45 ボーメと書いてあります.これを比重 d に換算する式は d = 144.3 / (144.3 - Be') となっているので,これより d = 1.453 となります.

比重が 1.453 ということは水100g(=100mL) に 45.3g の塩化第二鉄が溶けているという計算になります.私が使用しているエッチング液のボトルは 2L なので,906.34g の塩化第二鉄ということです.

塩化第二鉄の式量は162.22なので,モル数に換算すると5.587mol.この半分のモル数の銅が反応しうるので,全量反応したとしたときの銅の質量は銅の原子量を63.546とし,177.52g.

これが反応したときの FeCl2 と CuCl2 の総量は,反応前の塩化第二鉄の質量 906.34g に銅の 177.52g が加算された質量に等しいですから,溶液全体の質量は 3083.86g となります.よって比重はこれを2000で除し,1.542となります.

結論としては,45ボーメの塩化第二鉄水溶液(d=1.453)に銅が完全に反応したときに生成する,塩化第一鉄と塩化第二銅の水溶液の比重は d=1.542 となるということです.

ついで銅を反応させていない塩化第二鉄水溶液の水分が蒸発したときの比重変化を考えてみましょう.2L の水溶液から水分が x[g]蒸発したとします.このときの水溶液の質量は (2000+906.34-x) [g] ですから,これより比重が 1.542 になる x を求めると,177.66g.すなわち 177.66mL 蒸発すると比重は反応しきったときと同じになってしまうわけです.比重を元にエッチング液の寿命を測定しようとするならば,ある程度のオーダーの水分の蒸発に対しては注意を払わなければならない,ということが言えます.

さて,ここまで書いておいてなんですが,ここで一つ無視してきた大事なことを書かねばなりません.実はこれまでの計算はすべて「溶質を溶かしたとき溶液の体積は増えない」という仮定に基づいており,部分モル容積の計算は全く無視しています.なので,実は上の結果から「1.4-1.6の浮秤を買ってくればいいじゃん」という結論を導き出すのはまだ早いのです.というわけで,気が向いたらこの辺にも話を広げて,第3話につづけたいと思います.笑

ところで比重の話は置いておくとして,現実問題としてこのエッチング液はいったい何枚くらいの基板が処理できるでしょうか.計算結果より理論的には最大で177.52gの銅が溶けうるということが分かりました.基板に付いている銅箔の厚みを 35μm とし,基板の面積を S [m2] としますと,銅の密度が 8920 kg/m3 ですから,

8920×103×35×10-6×S = 177.52

これを解くと,S = 0.5686 m2 となります.100×75mm の一番小さな基板でいうと 75.8 面分です.実際エッチングで溶かす面積がこの半分くらい,また根拠は特にないのですが,現実的な時間にエッチングできるとする液の寿命が反応しうる銅の全量の半分を溶かしたところまでとするならば「75枚程度エッチングできる」という計算になります.

もちろんエッチングで除去する面積がなるべく小さくなるようにパターンを工夫すればそれだけ寿命は延びますし,マイクロストリップみたいにかなり除去しないといけないようなものばかりエッチングすれば短くなります.結局エッチングするパターンによって寿命は変わってくるので,実はこの枚数の計算もあまり役に立たないのでありました.苦笑 まあ計算の練習と言うことで.笑
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by jq1ocr | 2010-06-03 23:50 | 徒然話 | Comments(0)