スーパームーンと EME
2012年 05月 07日
さて,スーパームーンというのは近地点で満月になっていることをいうそうです.EME では別に満月かどうかは関係なくて,単に距離だけの問題だろうと思いますが,とりあえず計算してみましょうか.
まず距離についてですが,地球と月の間は概ね
近地点 356000 kmだそうです.
平均 384400 km
遠地点 407000 km
ところで送信アンテナから放射される電力を Pt ,アンテナ利得を Gt,アンテナからの距離を R とすると,その点での電力密度 Pd は以下のようになります.月面の有効反射面積(レーダ断面積といいます)をσとすると,地球方向に再放射される電力は Pd にσを乗じて,となりますので,受信アンテナで受信される電力 Pr はと書くことが出来ます.ここで Ae は受信アンテナの有効面積ですが,これは受信アンテナ利得 Gr との間に という関係がありますので,書き直すと以下のようになります.ちなみにここで Gt = Gr = G とおいた
は,レーダ方程式と呼ばれています.(レーダでは送信と受信を同じアンテナで行うことが多い為)
さて,ここから何が言えるかと言いますと,受信電力は距離の4乗に反比例するということです.(これを言う為に前の計算があったわけです)
よって最初に例示した距離から,平均距離,近地点における受信電力比を遠地点を1として書くと以下のようになります.
1 : 1.26 : 1.71これらを dB で書けば,近地点では遠地点に比べて 2.3 dB,平均と比べて 1.3 dB 受信電力が大きくなると言うことが分かります.
EME'er には常識なのでしょうけど,意外と差が出るものですねぇ.
だから,計算してみなくちゃ分からない,大科学計算で.(大科学実験の細野晴臣氏風に.笑 ついでにロゴも.菱形はそろばんのイメージ)
あ,正直全然「大」じゃないですけど,暗算じゃつらい,という程度の解釈でお願いします.笑
(*)Earth-Moon-Earth 月面反射通信のことで,地球から送信した電波を月面に反射させて,そのエコー(反射波)を受信することで通信を行う技術です.もちろん電波といっても無限の速度を持つわけではないので,月までの往復で約 2.5 秒かかります.遠距離を伝搬させなければならないので,一般には大電力と大きなアンテナシステムが必要となります.