人気ブログランキング | 話題のタグを見る

金銭上の利益のためだけでなく、専ら個人的な興味によって行う自己満足、通信及び技術的遊戯のための備忘的ブログです。


by jq1ocr

ケーブル損失の推定

現在うちの社団局では 5.6GHz は常設ではなく,使用するコンテストの前に仮設しています.しかし,作業の時間がとれる日時がいつも天気良好とは限りませんし,手間もかかるので,出来れば常設したいと考えています.ただしタワーから無線室まではかなり長い同軸ケーブルを引いているので,まさか無線室から直接 5.6GHz をケーブルに入れることは考えられません.そこでトランスバータを出来るだけアンテナに近い場所に設置したいわけです.ベストなのはアンテナ直付けですが,環境的にそういうわけにもいかないので,場所の検討が必要です.

その準備としてケーブル損失がどのくらいあるか調べることにしました.が,例えば藤倉のページを見ても分かるように,2.4GHz までしかデータがありません.よってここから推定することにしました.

まず損失は純粋に導体の抵抗によって発生すると仮定します.すると,周波数依存の成分は表皮効果によるものなので,損失は周波数の平方根に比例すると考えられます.ここでは 10D-SFA を使用するとし,求めたい 5.6GHz に最も近い 2400MHz における損失値 175 [dB/km] を基準としました.すると,下図の緑色の曲線のようになりました.
ケーブル損失の推定_d0106518_1703315.jpg
ちなみにカタログ値は赤線です.すると導体抵抗による損失ではない成分が存在していることが分かります.導体抵抗による損失は,カタログ値で最も低い周波数である 21MHz における 13 [dB/km] を基準にして描くと近いと考えられます.その曲線はグラフの青線です.

これらの違いの原因は導体抵抗による損失以外の損失があるためです.具体的には誘電損失であると考えられますが,この成分は周波数が高くなるとどんどん大きくなり,特に GHz オーダーでは無視できるほど小さくはないことが分かります.

この結果から,導体抵抗だけを考えれば,5.6GHz における損失は概ね 200 [dB/km] 強と読み取れますが,実際はその他の損失もあって 300 [dB/km] 程度と推測できると考えました.すなわち 10m 使うと 3dB ほどの減衰が見込まれるので,この値も勘案しつつ,出来るだけアンテナに近い場所に設置すべきという結論になります.
Commented by kuromiya at 2012-10-11 07:49 x
マイクロ波だと同軸ケーブルじゃなくて同軸管だっけ?
心線も中空になっているようなケーブル。

導波管とかって勉強はしたけど実物を見る機会は無いから...

それにしても10mで3dbじゃパワーが半分...
受信感度も落ちるだろうから直近じゃないとロスが半端じゃ無いですね。
Commented by jq1ocr at 2012-10-11 08:08
導波管といいますね.パイプになっています.扱いが大変なのと,周波数が低いと遮断周波数の関係から大きなものを使わなければなりません.同軸の場合も原理的に遮断周波数(こっちは上限)があり,10D の場合は大体 10GHz くらいで,細い方が通ります.導体損との兼ね合いですね.
Commented by kuromiya at 2012-10-11 20:28 x
そうですか、10GHzくらいまでは同軸が現実的ですか,,,
なかなか大変ですね。
Commented by jq1ocr at 2012-10-12 09:21
「10GHz くらいまでは同軸が現実的」とは言っていません.導波管はサイズが大きくなると,使用できる最低周波数が下がるのに対し,同軸ケーブルはサイズが大きくなると,使用できる最高周波数が下がるのです(遮断周波数と言います).でもサイズが大きい方が導体損が小さいので,兼ね合いだという話ですね.
Commented by WPJ at 2012-10-13 09:33 x
5.6GHzで300dB/Kmだったとして、10D-SFAで300m以上を配線するのなら、しょぼくてもいいからアンテナを使った伝送の方がロスが少ない、ということになっちゃうのかー。
うーん、別世界。

・・・これって、合っているのかな?
Commented by jq1ocr at 2012-10-13 11:40
条件にもよりますけど,ある距離が分岐点になりますね.考え方はあってますよ.
名前
URL
削除用パスワード

※このブログはコメント承認制を適用しています。ブログの持ち主が承認するまでコメントは表示されません。

by jq1ocr | 2012-10-10 07:41 | 無線設備・レストア | Comments(6)