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by jq1ocr

可変抵抗Aカーブの謎

可変抵抗って電子工作をするみなさんはご存じですよね.
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上のようなタイプの場合は円弧状の抵抗体があって,そこをスライダが摺動します.実際この製品だとベーク板に抵抗体が塗布された構造です.

このような可変抵抗器は軸の回転角によって抵抗値が変化しますが,上で述べた構造だと回転角に比例するのが基本です.
可変抵抗Aカーブの謎_d0106518_1731292.png
この図では B がそれです.しかし人間の感覚は電気的な量に比例せず,その対数に比例すると言われています.そこで音量調節に使われる可変抵抗はこの図でいうAのようなカーブの特性を持つものが使われることが多いのです.これを対数型といいます.一方Cカーブは逆対数型といいます.部品を見ると B1kΩ (或いは1kB)とか A100kΩ(100kA) と書いてありますが,これらはそれぞれBカーブとAカーブになることを示しているのです.ちなみに部品屋さんにいくと A と B は普通に買えますが,C はあまりありません.

さて最初に述べたように,円弧状に抵抗体を塗布した場合,固定端子からスライダまでの距離に抵抗値が比例しますので,Bカーブは簡単に実現できます.またCカーブもBカーブの可変抵抗に並列に固定抵抗をつなぐことで,その合成抵抗がCカーブ状になりますので,うまく定数を選べばこれも実現できそうです.しかし,Aカーブはそれほど簡単には実現できません.抵抗体の塗布の加減(幅や厚み,もしくは材質)をコントロールする方法なら可能ですが,そんな面倒な方法で作られているとも思えません.検索しても見つかりませんでしたし,一晩考えてみましたが,結局Bカーブにちょい足しするような簡単な回路構成で実現する方法は思いつきませんでした.

そこで残念ですが敗北感に苛まれつつ,模範解答を見ることにしました.市販されているAカーブの抵抗を実際に分解してみるわけです.
可変抵抗Aカーブの謎_d0106518_17242172.jpg
ぱっと見たところ抵抗体は一様に見えます.材質や幅が変わっているようには見えません.ほんとどうやってるのでしょうね?で,テスタを当ててみたら,場所によって抵抗値が違うではありませんか.そこでテストリードの間隔が変わらないようにテープで固定し簡易プローブとし,右から反時計方向にテキトーな間隔で当たってみました.すると右の端子に近い方から
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3k
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18k
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と変化していることが分かりました(測定したのは100kAの個体です)

ぱっと見,抵抗体の種類が場所によって違うとか,幅が変わっているとかいうようには見えません.が,ルーペでよく見てみると,厚みが違うようです.
可変抵抗Aカーブの謎_d0106518_17314618.jpg

というわけで,思ったより高度な作り方をしていることが分かりました.とてもがっかりですが,これは要するに A カーブの実現はそんなに簡単ではないということを示しているのだと思います.一方 C カーブも現物は A カーブと同じように実現している可能性が高いですね.手持ちに C カーブはないのですが,いつか入手出来たら確認してみたいと思います.

さて実はある案件でAカーブよりも深い(Dカーブ的)変化をするような工夫が求められていました.それを簡単かつ安価にする必要があったのですが,この結果からすると,別のアプローチを考えたほうが良さそうです.
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by jq1ocr | 2015-01-21 21:50 | 徒然話 | Comments(0)