アマチュア無線や電子工作,バイクの話などを徒然なるままに書き散らすメモ程度のblogです.


by jq1ocr

ファラデー回転の話

今日はインド哲学はお休みです.笑

某所でチャットしていましたら,衛星通信の話になりまして,あるOMが「アマチュア衛星は直線偏波を使っていると思う」とおっしゃっていました.通常は衛星地球間の通信ではファラデー回転という現象が起きます.これは,電離層を電波が通過するときに,地球磁場と電子の影響で,偏波面が回転をする現象です.そしてその現象の大きさは時間と場所で変化します.そんなことも一因で通常の衛星通信では,直線偏波ではなく円偏波を使うのですが,確かにアマチュア衛星の中には直線偏波を使っているのもあるらしいです.例えばAO-51の2.4GHzのダウンリンクは直線偏波らしいです.これは多分地上局側が2.4GHzの円偏波に対応したアンテナを用意するのが難しいことと,周波数が高いほどファラデー回転の影響が小さくなるためと考えられます.では実際はどのくらいなのか計算したくなりますね.笑 ファラデー回転の実例として4GHzでは最大9度の観測例があります[1]ので,ここから推測すると2.4GHzにおける最大回転角は25度となります.これを信号強度に変換すると,偏波面が既知の場合,最大でも 0.9dB 程度の落ち込みで済みますから2.4GHzにおけるファラデー回転の影響は大きくないと考えられます.しかし理由は後述しますが,実はアマチュア衛星でも多分円偏波の方が多数派ではないかと思います.

次いで,OMのお話の中で出てきたことで分からなかったのは「円偏波でも短時間で楕円偏波になったり直線偏波になったりすることがある」ということです.ファラデー回転ではその現象は説明できないと思うのですが,OMはもう寝る時間だということで話が終わってしまいました.で,自分で考えていてふと思いついたことがあります.それは衛星の姿勢です.
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観測者からみた衛星の相対的角度は変化する

あらかじめ言っておきますと,ちょっとこの図はオーバーです.観測者からみた衛星(アンテナ)の角度がどのように変化するかを説明するためのものなので,実際にこうなるというわけではありません.ただこの図のような姿勢がありうるとすれば,そのときの観測者から見た偏波面は以下のようになります.(左から Posture1,2,3に対応)
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観測者から見たアンテナと偏波面の関係

完全な円偏波に見えるのは,観測者とアンテナが正対している場合であって,傾いている場合には楕円偏波となります.またアンテナと観測者の位置関係によっては直線偏波に近くなることもあるでしょう.特に低軌道衛星の場合は使用時間を多く取ろうとするほど角度が大きく変化するので,このような現象はあり得るかと考えられます.ファラデー回転はある偏波面を消滅させるというような効果は持たないので,こうして考えてみますと,「円偏波でも短時間で楕円になったり直線になったりする」という現象は,ファラデー回転によるものではなく,「アンテナと観測者の角度関係に起因する」と言えそうです.

さて,前述していた「普通は衛星に円偏波を使う理由」ですが,ここまでの話でもお分かりと思います.低い周波数ではファラデー回転の影響が低減できるという作用もありますが,BS放送のような高い周波数ではこの影響が無視できるのにどちらも円偏波が多いですね.結局,円偏波が使われる理由は「衛星(アンテナ)側の制御が楽になる」ということだと思います.衛星通信の専門家や設計者のご意見は如何でしょうか?

参考文献
[1] 三輪進,加来信之:アンテナおよび電波伝搬,東京電機大学出版局,1999.
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Commented by BWT at 2007-08-09 09:52 x
静止衛星は姿勢コントロールをするためにスピンをかけていると聞いたことがあります。
よって、本体が回転するから円偏波と思ってました。

今度、衛星を作ったりと打ち上げたり管制している人に聞いてみます。
Commented by jq1ocr at 2007-08-09 11:22
スピンをかけるものもあるかも知れませんが,コテコテついてる現在の衛星はほとんど3軸ジャイロを使っているんじゃないかなと思います(あくまで推測ですが).うちもJAXAに知り合いがいるので(昨日遊びに来たので一緒に飲んだのですが,この疑問はそのあと発生したのでした.苦笑)今度聞いてみます.
あ,円偏波は他に一つ利点を思いつきました.衛星から右旋で来た場合,地上の物体に反射すると左旋になるので,直接波はそのまま受信できるけど,反射波は減衰するということもありますね.まあパラボラ使ってたらあまり関係ないけど.
by jq1ocr | 2007-08-09 01:59 | 徒然話 | Comments(2)