エッチング液を作る
2008年 11月 04日
そういえば昔も粉から作ったような気がしますが,濃度が分かりません.なんだか色合いで決めていたような気がします.ずいぶんたくさん入れたような覚えもあります.で,調べてみたのですが,どうも濃度についての記述が見あたりません.あるところに「5% 或いは 13%」と書かれていたのを発見しましたが,そんなに薄かったかなぁ.それに「或いは」ではなく「乃至」じゃないかなぁ.まあそんな重箱の隅はおいといて,とりあえず 10% で作ってみました.試作は手持ちのボトルの関係で塩化第二鉄 50g に水 450g です.しかしやっぱり色からして薄いです.もしかして粉が水和物だからその分引くのかな?分子量は
- FeCl3⋅6H2O = 270.30
- FeCl3 = 162.30
まず仮に 10cm × 15cm の片面基板の全面をエッチングするのに必要な第二塩化鉄の量を計算してみましょう.
銅箔はサンハヤトの基板だと 35µm の厚みがありますので,エッチングされる銅の体積は
35×10-4×15×10 = 0.525 cm3となります.銅の比重は 8.95 g/cm3 なので,この銅箔の質量は
0.525 × 8.95 = 4.70 gとなります.銅の分子量は 63.5 なので,この銅は 7.4 × 10-2 mol です.ここでエッチングの化学反応を考えますと,
2FeCl3 + Cu → 2FeCl2 + CuCl2ですから,1mol の銅をエッチングするのには 2mol の塩化第二鉄が必要であることが分かります.すなわち,この銅箔を溶かすのに必要な塩化第二鉄のモル数は14.8 × 10-2 mol となります.ここで,FeCl3の分子量は 162 ですから,これより 24g の塩化第二鉄が必要であることが分かります.結構量は多いんですね〜.ちなみに先ほど書いたように一般的に出回っている塩化第二鉄の試薬(*)だと六水和物(FeCl3⋅6H2O)だと思うので,その場合は 40g になります.
エッチング液中の塩化第二鉄が,反応に必要な,計算で求めた量以上ないとすれば,反応初期は良くても,どんどん反応速度が遅くなっていってしまいます.反応速度は濃度にある程度比例するはずなので,40g では永遠に反応が終了しないことになってしまうのです.そこで反応終了時にも十分な量の塩化第二鉄が残っているように,たっぷりと供給することが必要になるわけです.
私の場合,最近はマイクロストリップラインを書くことが多いので,片面はほとんどエッチングでとってしまうことが多いです.ということはかなりエッチング液には過酷な条件であり,ちなみに先ほど作ったエッチング液では二枚も出来ないことになるでしょう.やはり1枚エッチングするたびに新しいエッチング液や塩化第二鉄の粉末をどんどん足していかないと駄目なわけですね.基板の用途によっては,エッチングで除去する領域を特に大きくする必要がない場合もあるでしょう.そういう場合には,銅箔を多く残すのがエッチング液にはよいことになります.
そういえば基板加工機もフライスのようなもので銅箔を削っていくので,削る面積が大きいほど加工に時間がかかります.ちょっと似てるなぁと思いました.RFの場合はパターンの作り方は非常に重要ですが,そういう分野でなくても,仕事で基板を作っている人には,こういうこと(引き方で加工効率をあげる)を考えるのは必須なんでしょうね〜.
【まとめ】腐食させる銅箔150cm2あたり,塩化第二鉄40g足す.
(例:15×10cmの基板でエッチング率50%だと塩化第二鉄20g分消費する)
(*)試薬は高価なので,工業用の塩化第二鉄が入手できなければ,やはり一般論としては美術用のを使うのが一番良いと思います.
話は変わりますが、TDUの3文字、懐かしいです。まだTDUではなくてTEECと呼んでいた時代に、1部E科を卒業したOBです。(YAQには所属していませんでしたが) コンテストでは毎回交信してますが、ゆっくりお話することもできず残念です。
萬 新一 JA1PZD
https://makezine.jp/blog/2009/11/my_new_favorite_etchant.html
エッチング方法はいろいろありますよね.液体をもっと簡単にして塩水だけでやる方法なんかもやってる人がいます.電源がいるのでトータルで簡単かは分かりませんが,わざわざ買ってこなくていいところは楽そうです.試したことはないので,うまく出来たらエントリします.hi
気づいたことを思いつくままに・・・
表題は”最近の”ですがかなり古い記事から(基本は今でも同じです)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jiep1986/8/7/8_7_545/_pdf
メッキ等のプリント基板の薬品を製造・販売しているメーカーの方が書かれたものです。これによると塩鉄は370g/L、50°Cでエッチングするとお使いの1オンス箔だと5分程度の浸漬でエッチングできるようです。
基板の製造現場では、昔は塩鉄が多かったですが90年代には塩銅に変わりました。。
おしゃるように水和物だとさらに重量的には使用量が増えます。1Lあたり370gは620g程度になります。エッチング速度は一般に濃度が上がる、温度が上がる、スプレーなら圧力が上がる方が速くなります。
工業的には、最近は硫酸と過酸化水素水の系もよく使われます。家庭でも硫酸が手に入るなら(多分、身分証明等が必要だったかと思いますが)、こちらの方が簡単かもしれません。難点は硫酸は人間の肌を腐食するので皮膚に触れると化学やけどします。使用経験がないなら、塩鉄系が一番安全です。塩銅系でも揮発性の塩酸を使いますのでこちらも最低限の知識が必要です。
電解エッチングでパターンを作るのは電気メッキ浴のように調整しないと大変そうです。原理的には食塩水などの電解液があればできますが・・・エッチング速度は流す電流に比例しますが、電気メッキよりはかなり大電流にしないと時間がかなりかかりそうです。工業的には製面のための電解研磨という方法が同じ仕組みでエッチングしています。