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by jq1ocr

未来の無線機

部屋の掃除をしていたら SDR の箱がでてきました.で,前にお風呂でぼーっと考えていたことをふと思い出したので書いてみます.

以前 Gyao のニュースで拉致被害者へのラジオ放送「しおかぜ」の妨害に関しての技術解説をしたことがあります.このとき使用したラジオは SDR-14 というソフトウェア受信機でした.
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SDR-14, Software Defined Receiver by RFSPACE, USA

ソフトウェア受信機というのは,アンテナからの RF 信号をそのまま A/D 変換し,コンピュータソフト上で復調する受信機です.変復調をソフトウェアによって行うために,英語では「ソフトウェアで定義された受信機」となっています.すなわちハード的には単なる A/D 変換器なのです.

この番組で妨害放送の解説を依頼されたのですが,実際に妨害されている様子を聞いてみないとなんとも言えないわけです.しかしうちには短波受信機もなかったし,放送が夜中だったこともあって,PC で時間指定して録音(周囲の帯域をまるごとストレージし,あとで周波数を指定して復調する)して解析を行いました.現在市販されている HF 無線機の多くは,IF 段もしくは AF 段で A/D 変換を行い,信号処理は DSP 任せになっていたりしますが,SDR はこれの正常進化形といえるものです.無線機につきもののコイルとかが見あたらないのが特徴です.

ところで,実は CW の世界ではすでに CW 帯域丸ごと取り込んで,FFT 処理した結果を可視化するソフトがあり,これによりバンド内のすべての復調可能な信号を同時刻に複数みることができるようになっています.クラスタの情報を周波数軸に書き込んでいく,例えば N1MM Logger にあるような表示方法が,コールだけでなく,交信内容も逐次表示できるのです.これをコンテストで使用することの賛否は分かれていると思いますが,アナログ的な同調回路を持たずに DSP で済ますようになれば,自ずと可能になることなので,止められない進化であると思います.

さて,受信機は今後 SDR が主流となっていくことは目に見えていますが,送信機はどうでしょうか?今のところは昔とあまり変わらないようですが,そのうち受信側と同じように,送信側もディジタル化されていくことでしょう.要するに変調後の RF 波形をそのまま DSP と D/A で生成するわけです.アンプはかなり広帯域のものが出来ていますから,技術的には可能でしょう.

そして,先ほど CW 受信の場合の話をしましたが,フォーンでも CW でも複数の信号を同時に発生させる,すなわちディジタル的に,多重した RF 信号を作り出すことも可能ですから,パワーのことを置いておくとすれば,一回の送信操作でたくさんの局との交信が同時に出来てしまうということも可能なわけです.もちろん極論ではありますが.....

もしこういうことが普通になったとき,コンテストで競うのは何になるのでしょう.交信がコンピュータ任せになってしまうと,もはや競うべきはロケーションや機材でしかなくなってしまいます.もしかしたら,優れた DSP ソフトの自作という分野もあるかも知れませんけど.もちろんアマチュア無線は趣味の世界ですから,ある程度進化したところで,例えば今の CW のように個人の技量を楽しむ,語弊をおそれずに言うならば,旧態依然を楽しむという風に戻っていくのかも知れません.ただ,いつまでも今と同じ形のみのアマチュア無線が残るということはないと思うので,趣味の世界はちょっと古いくらいがいいのかも知れませんが,進化の先にあるものはいったい何なのか考えてみるのは悪くないことでしょう.
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by jq1ocr | 2009-03-05 18:30 | 徒然話 | Comments(0)