同じ 500Hz のフィルタでも,八重洲純正(上)と INRAD(下)では大分違います.
まず八重洲では帯域情報を無線機側に認識させるためのジャンパ用ランドがありますが,INRAD ではすべてが GND に落ちてしまっています.こうなると,「自在書込可」ということになって,無線機側で表示させる帯域を任意に設定できるはずなのですが,FT-857DM では 2.3kHz,FT-897DM では FIL1(すなわち値なし)と表示され,これを変更することが出来ませんでした.(その話は
こちら)
このままでは気分が悪いですし,後日種々の間違いの元でもあるので,
こちらの記載を参考に INRAD のフィルタを改造することにしました.
INRAD の識別端子は全部 GND に落ちているわけですが,ジャンパが付けられるようなパターン形状ではないので,ランドを切断するというのも手間です.そこで,一度コネクタを desoldering することにし,浮かしたいピンだけ内側に折り曲げて浮かすことにしました.
反対に曲げると,無線機側のピンと干渉するのは分かりますね.hi
どのピンを加工するかは以下の通りです.これらの図はフィルタ基板の半田面から見た図です.まず INRAD のデフォルトはこのようになっています.
上半分の4ピンは,フィルタの入出力で,下の赤い破線で囲んだ3ピンが,帯域設定用です.デフォルトではすべて GND に落ちています.
これを 500Hz にするには....
図中の赤い Open のピンを浮かします.上の作業で言えば,折り曲げることに対応します.差し込んで浮かしたピン以外を半田付けします.
上の INRAD のは左右一つずつピンが浮いている(曲がっている)のが分かりますね.ちなみにここで注意ですが,INRAD の基板のパターンは若干熱に弱い感じがします.半田ごてを当てすぎてパターンを剥離させたりしないよう
くれぐれも注意して下さい.製品に使用されているハンダは鉛フリーなので融解温度が高く,このような作業に慣れた人でないと,パターンを剥離させてダメにしてしまう可能性があることを理解して下さい.この作業が無理だと感じる方は素直に純正を買うか,INRAD を使うなら帯域表示については妥協して使っていた方が良いです.
さてこの改造を施した INRAD フィルタを FT-897DM に装着すると,表示は次のようになりました.
片方が純正500Hz,もう片方が INRAD 500Hz です.笑 ちゃんと認識されています.良かった良かった.
ところで,純正と INRAD を聞き比べてみますと,フィルタユニット自体は同じものなのでは?と思うくらい無信号時の音調には差が感じられませんが(定量評価はしていません),純正の方がわずかに音が小さくなるような気がします.で,純正の方の基板を見るとこんな風になっていました.
純正は出力にパッドが付いているのです(INRADには無し).この部分はアッテネータを構成しておりますが,減衰量はわずかですので,これの有無が特性にどの程度の差を生むのか調べていませんが,INRAD と純正にはちょっと違うところがあるというところは知っておいて良いかもしれませんね.
ちなみに 300Hz と 2300Hz の設定は以下の通りです.