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by jq1ocr

万年筆インク紙

万年筆のマイブームの再来で最近はミュージックにはまっている私,図書館でも万年筆関連の本をいろいろ借りて読んでいます.その中の一冊がこちら.

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片岡義男と言えば,バイクやクルマが出てくる小説が多くて,学生時代はよく読んでいました.この方の作品を読むのは久しぶりですけども,これは小説じゃなくてエッセイです.

今時の作家はいきなりワープロでって人も多いのかも知れませんが,少なくともその前はみんな原稿用紙に書いていたわけです.彼のように多作な小説家であれば,相当な量を手書きすることになりましょう.ボールペンのような筆圧が必要な筆記具は適しておらず(近年の製品はそうでもないかもだけど),結局は万年筆に帰着するようです.万年筆は書くときの感触がモデルによっても,更に言えば個体によっても異なるような,工業製品としては今時珍しい職人技が必要なアナログデバイスです.更に言えば,インクや紙との相性も相当大きいです.自分の思考をなんの障害もなく紙の上に吐き出していくことが求められるので,これらの組み合わせにはただならぬこだわりがあるのは必然でしょう.そんなこだわりに関するお話がこの一冊にあふれています.

もちろん感覚的なことは個人によって捉え方が違いますから,読んでいて共感することもあれば,そうでもないこともあります.さすが作家さんって書く量が桁違いだから,予想もしなかったことが起きていたりして,面白いですね.

彼は元々鉛筆ユーザーだったそうです.書く量が多いからか筆圧が高くなくて済む 2B〜5B を使っており,そしてそのあと万年筆になりました.その中で一番驚いたのは,モンブラン22というエントリーモデルを合計30本も使いつぶしたという話.彼曰く,200字詰め原稿用紙で300枚も書くとペン先がダメになるらしい.え?万年筆の万年が永久の意味ではないことは分かりますが,そこまですぐにダメになるものでしょうか.ペン先が開いちゃうなら,筆圧が高すぎって思うけど,平らになるということなので,普通に摩滅しているのでしょう.しかしそんな枚数でダメになってしまうなんて.1年に3本,10年で30本使ったというのです.いくらエントリーモデルとは言っても 14K の普通のニブがついてますから安物ってわけではありません.その頃は家で書くときにはモンブラン,外で書くときは鉛筆を使っていたそうです.ですから,この時期に書いた原稿の全てがモンブランで書かれていたわけではないし,彼がどの程度の割合で自宅で書いているのか分からないので,この数値が間違っているかという検証は難しいです.

試算では,一般的に短編小説だと400字詰め原稿用紙で100枚ほど,長編だと400枚くらいになるらしいということから考えました.200字詰めで300枚というと,400字詰めで150枚になるでしょうから,中短編くらいの話を1本書いただけでダメになると言うことです.ほんとかなぁ?ちなみに鉛筆一本で176枚書けるという試算もあるので,モンブラン22の寿命は鉛筆と同程度ということになってしまいます.

プレピー中字も使ったそうです.ただ彼の買ったものはペンポイントが最初から平らになっていたのですって(うちのは丸いけど).で,その話では「原稿用紙500枚くらい書くとこのくらいになる」とあるのです.あれ?さっきの話と矛盾しているような.それとも 22 ってペンポイントがメチャ小さいのかな?

あの話は 400字詰め換算 で300枚の間違いだったということも考えられます.というのも,作家さんって自分のオリジナル原稿用紙を作ったりするじゃないですか.彼も1万枚作ったことがあるそうなのですね.で,5年後には5万枚注文したというのです.ですから10年で2万枚使う計算で,モンブラン30本をそれに使ったならば,1本あたり670枚です.400字詰めなら335枚になるので,ちょっと近くなりました.

ただ中屋万年筆のページには,イリドスミン付きのペン先(普通の金ペンはついてる)だと,文字数にして500万〜600万かけるものだと書いてあります.200字詰めなら少ない方で2万5千枚.原稿用紙を10年で2万枚使う作家なら,万年筆を10年で一本使いきるのは妥当でしょう.ただモンブラン22が普通の金ペンより30倍も摩滅するスピードが速いとなると,万年筆と言うには欠陥かも知れません.百年筆くらいにしておきましょう.笑 あ,もしやイリドスミンのついてない金ペンがあるってことなんですかね?

ともあれあまり一般的でない状況でのことみたいなので,この話はこの辺で.

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by jq1ocr | 2022-03-18 21:00 | 万年筆・インク | Comments(0)